今日は、工藤直子さんという方の詩をご紹介します。
時期外れの詩ですが、何年か前に読んだ雑誌の切り抜からです。
何かせつないような、清々しいような・・・
けっしん 工藤直子
あけがた せみが しずしず あらわれ
「おまちどおさま」と殻を脱ぎはじめた
眠さもわすれ 見つめると
「この殻はなあ
生まれ変わるための『じかん』の家さ」
よいしょっと羽を抜き出し せみ 私をみて
「あんたも生まれ変わりたいのかい?」
・・・どきっ・・・
殻をかぶっているのを見破られたか
しかし どうやったら?
「決心するんだよ いっしょうけんめい」
ひとりで行かなくちゃならない道があるんだ
いま歌わなきゃ いつ歌う?
歌いきったら死にます と 飛び立ったせみを
空は しっかり抱きよせ
見えないところで涙をながした
詩の追伸
元気な夏の盛りの、中心点のあたりに、
強烈な孤独が埋め込まれている気がする。
その孤独は、もしかしたら、せみの鳴き声
かもしれない。 工藤
shimoo@ かっこいいでしょ。この蝉!